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Essay:Dial M

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vol.22 WHITE HEAD

Feb 2003

まず、言っておかなくちゃならないのは、
戦争なんて、ふざけるな、と。
時代遅れも甚だしい。
脳味噌が腐っているのか?
ミサイルで街を襲うのと、高層ビルに旅客機を激突させるのと、同じだということに 気付かない馬鹿者が、同じ人間の仲間としてまだこの世界に住んでいるということを 恥ずかしく想いますね。

というハードな前ふりの後ですが、ここからはまったく関係ないです。スイマセン。 ひさしぶりに映画に出演。
劇場映画『JamFilms2』の一編で、『クリーンルーム』という題名の短編で す。ほんの数シーンですが、ちゃんと台詞もあった。共演は麻生久美子さん。
監督はMTVの鬼才、高橋英樹さん。
役者の仕事は石井輝男監督の『盲獣VS一寸法師』以来だなあ。でも、あれはまだ正 式公開されていないから、そうなると『ボディドロップ・アスファルト』以来か。 あれも特別友情出演って感じだったからなあ。
ムカシのことを知っているヒトからは「もう役者はやらないんですか?」ってよく聞 かれるんですけど、別にやめたわけじゃないですよ。
というよりソモソモ、いつ正式に始めたっていうことでもないし。
学生の場合、映画を作ると自分たちで何もかもやらなきゃならないでしょう。
監督といっても、カメラマンでもあり、雑用係でもある。出演もしなきゃならない。 だから最初の頃に作っていた自分の8ミリ映画でも、けっこう自分で出ている。自分 の脚本を自分で演じるのだから、これはハマッていて当たり前でもある。
そして仲間の映画にも出る。
気が付くと、何十本も出演作があった…。
(プロフィールの後に出演リストがあるので見てください。)
プロの映画で代表作というのは、いわゆる『ねらわれた学園』。
このとき主役の一般公募というのがあって、知人が冗談半分に推薦しちゃったの。 でも監督の大林宣彦さんは知り合いだったから、さすがに「手塚君は薬師丸ひろ子 (当時トップスター)の相手じゃなかろう」と分別あって、敵役をオファーしてくだ さったのです。
脚本もらってびっくりですよ。主役のひろ子ちゃんから数えて4人めに名前がある。 おいしい役。まあ『白痴』の橋本麗香みたいなもので。(違うか)
こっそり自分で映画館に観に行った時は快感でしたね。ぼくが登場すると、ほとんど の若い女性客が一斉に「キャー!」とか「キモチ悪~い!」って騒ぐの。
しかもさらに驚いたのは、ヒーローを射止めた高柳良一君がデビュー作というので新 人扱いされたのに比べ、ぼくは「新人」とは書かれなかったこと。
8ミリ出演でも映画は映画、と認められたんですね。それがなんか嬉しかった。
ある映画の専門誌では、その年の新人俳優のランクで泉谷しげるさんを抜いてベスト 6位だったんです。
あと、内藤誠監督の『俗物図鑑』という映画では、1シーンだけの出演でしたが、原 作者の筒井康隆さんや呉智英さんら評論家に絶賛された。
そんなのも、今やただの思い出ですね。
いろんな役やりましたが、やっぱりぼくが似合うのはクセのあるヘンな役。 狂った博士とか(笑)。
一番凄まじかったのは石井聰亙監督『爆裂都市』の、一瞬しか映っていませんが、両 脚がなくて腕で走っている浮浪者。
あと、『ジャグル大帝』のサイじいさんの声とか。「がーっ」と一声叫ぶだけ。観て もわかんないって、そんなの(笑)。
今回は医者の役で、けっこうマトモ(だと自分では想っている)。
そういえば、以前も小中和哉監督の『ブラック・ジャック』(Vシネ)で、ちょびっ とだけ医者の役やった。あれも、まあ、マトモといえばマトモか。
余談ですが、手塚家の男は代々医者や法律家が多かったそうなので、母親はぼくにも 医者か法律家になってほしかったそうです。映画作家になると知って、けっこう嘆い たんですって。だからこうやって映像の中だけでも医者や法律家(『盲獣VS…』の ときは検事だった)になれたのだから、良かったかな。
親には申し訳ないが、サイコな役や病気の役とか、ウマイです、いまでも。
しかし出演は楽でいいですよ。
なんて言ったら俳優に怒られそうだけど。
でも監督するより、ぜったい楽。
とりあえず役のことだけ一途に考えていればいいから。
それで疑問があったら、監督に聞けばいいし。
問題あれば、指摘してもらえるし。
台詞をもっと短くとか、あっちの方向にゆっくり歩いて、とか。
今回は医者の役だから、本当は医者に会ったり研究とか下調べとかできたらベストな のだけど、ストーリー上の理由もあってそれはや??らなかった。
せいぜい本屋で医療専門誌を斜め読みしたのと、健康診断を観察したのと、病院勤め の友達に軽く検査のこと聞いただけ。
まあアバウトといえばそれまでなのだけど、出番は一瞬だし、リアリティよりヴィ ジュアル重視という企画の狙いがあったから、それでいいかな、と。
しかし、問題は髪の毛。
ふだんのぼくの髪の色で医者、というのはいかがなものか。
と自分でも想ったのですよ。
それじゃヴィジュアル系の医者だ。
いや、やっぱりマッド・ドクター。
コメディやホラーでは通用しても、シリアスな映画ではちょっとね。
だから思い切って髪の色を染め変えました。
落ち着いたグレー・ブラウン。医者らしく。
ひさしぶりの普通の髪の色。
ところがフシギなことに、髪の色が劇変しても、仕事先では誰も口にしないのです よ。
正確には、女性は必ず一言ぐらいあります。
「髪形かえました?」とか「あっ、髪の色が・・・」というのがフツウの反応だと想 うのですが、男は何も言わないのだな。
フシギ、フシギ。
そんなことを口にするのは失礼と想うのか、それともまったく興味ないのか、気付か ないのか・・・。
別に注目してほしいとは想いませんが、まったく無言というのも気味悪いモノです よ。
ぼくは職業上、というよりヴィジュアリストだから、身近な女性がリップの色や眉の 書き方ひとつ変えただけでも分かるのに。
きっと男たちは、そういうことをちっとも気にしないのだなあ。
女性の気遣いには申し訳ないことですが。

ところで。
髪の色変えると、運気の流れが変わるのですよ。
たしか去年も正月に、衝動的に髪をブルーにして、とたんに大風邪をひき、その後 ずっといいことがなかった。
単なる想い込み、と気にしないようにしていたが、やっぱりその後、ツイてない。
今年はここまでずっと調子良く来ていたのですが、たちまち気分も低調。
最悪は、エレベーター式の駐車場に車を停めたら、そのエレベーターが壊れてしまっ て、地下から車が上がってこなくなった。そんなん、アリ??
寒いところで2時間も修理に待たされましたよ。
ツイてない上に、なんだかアタマもぼんやりしてしまって、毎日通る道を間違えた り、仕事机の上に思いっきり飲み物をこぼしたり、ろくなことにならない。
あわててもとの色に戻しましたヨ。

どうして髪を白くしているの? とよく尋ねられますが、特にコレという明確な理由 はないのです。
別に星座がレオだから、というわけじゃアリません。
けっこう、その時々で髪形は変えているんですよ。
ほんのオシャレ、のつもりなんですけど。
でも他人から見ると“ほんの”では済まないみたい。
最初は前髪だけがメッシュで白でした。
それから、触覚みたいに長い部分ができて、ウシロアタマに白い尻尾ができて。 最後にとうとう全部白くなったという。
ちょうど『白痴』の撮影が始まる頃だったから、願かけという意味もあって「白髪」 もいいかな、と。
それからもう6年ですか。白いままです。
もちろん髪は伸びてくるから、たまに白くしなおす。
色を抜くのは馴染みのサロンでやってもらうのですけど、ふつうはこの時、強い薬品 を使うので頭皮が痛んで、ひどくしみるものなんですね。
それが耐えられない方は、髪を白くできない。
ぼくは永くやっているせいか、ぜんぜんしみない。痛くも痒くもない。
皮膚が鈍感になってしまったみたい。
今やこの白い頭が自分でも馴染み過ぎてしまって、これが自然な感じがします。
どんな人込みでもすぐ分かる、と仲間内では便利に想われています。
だから運が向いている限り、当分これでいこうかな、と。
地味だが主張が強く、それでいて何色にでも染まる、という自分のアンビバレントな 性格に合っているのでしょうね。

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