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vol.20 2002

Dec 2002

『双』 村社由起

今年はどういう年だったのかな。
ずっと時間について想いを巡らしながら、過去の自分を精算していた。
過去の作品をDVDにしたり、資料を整理したり、過去について語ったりっていう。
1980年から2002年まで、この22年間をざっと総括していたということ。
暮れのイベントでは、DVDの試写を兼ねてレセプション・パーティをしたのだけ ど、かつての学生映画の仲間や出演者が勢揃いして、大いに懐かしかった。
けど、ここで過去にばかり浸っていてはいけない。
過去を手に掴んでいじりながら、未来について考えてみる。
いまが2002年で、生まれて41年目。
もし今年を折り返し点と考えれば、あと41年経つと2043年で82歳。
82歳まで現役かなあ。
映画監督に定年はないから、きっとヴィジュアリストも引退なんかなくて、まだ何か
やっているのだろうな。
きっとそのころもあまり変わっていなくて、そうそう41年前も同じようなことやっ てたなあ、なんてブツブツ言いながら気持ち良さげに面倒なことをやっているに違いない。
そんな妄想を抱きながら改めて見てみると“2002”という数字の配列は、まるで 鏡像のように対照的だ。
折り返し点としてはピッタリ。

というわけで『2002』という題名の短編作品を作ることにしました。
去年『2001』を作ったから今年は『2002』。
安易ですか?
でも自分にとって“2001”と“2002”は大事な年なのですよ。
どうしてなのかは説明できないのだけど、そんな気がしていて。
さて、どんな映画にしようか?
いつもイメージばかり追っているから、ひさしぶりにドラマっぽいものにしようか。
“2001年”にちなんだ短編集。
作ると想うと嬉しくなってたのか、マネー嬢に呆れられるほど次々とアイデアが浮か んできて、収集つかなくなってきた。
ひとつのアイデアを考えているうちに、すぐ次のアイデアが出てきてしまう。
キリがない。
しかも、企画中の劇映画とだんだんイメージがダブってきた。
次の映画の予告的な内容になるのか?
はたまた次の映画に繋がる物語に・・・?
予行演習?
あー、やっぱり、やめた。
次にきちんとした長編劇映画を作るためにも、ここで安易なことをしてはいけない。
これは作家の良心なのか・逃れなのかわからないが、暮れも差し迫った2002年末 に慌てて作るのなら、やっぱりドラマは合いません。
実験超短編にしました。
以前に8ミリで『風景の映画・模様の映画』という短編集を作っていたのだけれど、 何かそんなものをひさしぶりにやってみたくなった。
音楽でいえばアンビエント・ミュージックに近いけれど、環境映像ではなくてしっか り観るための映画という意味では、現代音楽に近いアプローチかも。
音楽といえば、ちょうど最近クラスター(通は“C”のクラスターと呼ぶ)を聴き直 していて、イーノとやっていたあたりも良いのだけれど、実は大量にリリースされて いた(そしてなかなか日本には届かなかった)レデリウスのソロ・ワークが今は旬。
彼のドライで淡々とした(でもちょっぴりメランコリックな)音響工作を聴きなが ら、こちらも映画を組み立てる。


今回の内容はかなりチャンス・オペレーション的に決める。
偶然の機会(チャンス)を思考の糸で紡いでいって、まとめる。
どんなイメージにしようかとぼんやり想っていたならば、久しい友人から電話があっ て、美しい双子の姉妹がいるので是非会ってみてほしいという。
よく聞けば知り合いでもなく、たまたま立ち寄った居酒屋の.?店員なんだって。
絶対に会った方がいい、と彼は言い残して、アメリカへ催眠術の勉強に旅立ってし まった。訳がわからずその居酒屋へ行ってはみたが、すでに姉妹は店を辞めてしまっていた。
しかし、それから双子の話題がやたらに増えてきた。
別の友人は、双子の彼氏が欲しい、誰か紹介して、なんて言い出す。
ファミレスに入ると、隣の席に双子の赤ちゃんが来る。
雑貨屋では双子の人形を見つけ、新聞を開けば双子の記事…。
そういえば“2002”という形は、双子のようにも見える。
よし、今度の映画には双子だ。
人生の折り返し点。
双子に導かれた過去と未来。
永遠の循環と、いまという瞬間の交差。
そんな想いを映像にできないか。
黒から白に、白から黒に移りゆく循環。
回転する円の中に、双子のイメージ。
11月20日。知り合いのファッション・デザイナー、20471120のショーがあった。
ここにも2と0が並んでいる。
これも“いま”という瞬間のせっかくの機会だから、掴もうと想った。
無理にお願いして特別に撮影させてもらうことにした。
(THANK YOU,MIFU!)
するとズラリ並んだモデルの服は、まるで事情を知っていたかのように黒から白へと 移りゆくグラデーションだった。
ぐるぐる巡る、黒と白。
11月22日。1と2がならぶ日。知り合いのギャラリーに立ち寄ると、双子の絵が飾られていた。
村社由起さんという画家の作品。
本当は双子ではなく、ひとりが鏡に映った姿を描いたものだ。
しかも、丸い絵だった。円の中の双子。
よし、これを掴もう。
「2002年11月22日に、双子の絵を2枚手に入れる。」

翌23日は、『白痴』でお世話になった新潟のシネウインドでパーティがあった。
せっかくまた新潟まで来たのだから、このチャンスも掴もうと想った。
そこで、かつての『白痴』のロケ現場に出向いて撮影。
過去と交差する、今。
そして12月に入り、知人に頼んでついに双子の姉妹を紹介してもらい、撮影する。
衣装はこれもたまたま縁があって知り合えたデザイナーSERAPHIMの服を借り る。12月12日12時。
カメラを持って外に出る。この瞬間も、掴もう。
そうして集まった映像の断片を、3日徹夜してシステマティックに配列する。
ひさしぶりにあまりに実験的。
ああ、そして徹底してドライな映画だ。
まったく情がない。
何だろう、この信じがたい冷たさは。
来年、熱を帯びるための準備なのか。
過去を横目で眺めながら、未来の話をする。
2003年の話。そこから始まる、新しい時の話。
いくつかの映画の企画。イベントと、本の出版と。
黒から白へと移りゆく流れ。
徐々に加速する。
熱を帯びて。
これから忙しそうだ。
さようなら、2002年と双子たち。

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