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Essay:Dial M

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Vol.14 ただいま進行中

Jul 2002
「よろしくプロジェクト、ただいま進行中」
ってCM、聞き覚えある声でしょ?
なんのCMかって? それは…(言わないっ)
ごくたまにね、ナレーションの仕事もするのですよ。
ホラ、特徴あるでしょ、ぼくの声って。
聞いたことないと分からないと思いますが、高い音と低い音がいっしょに出てるんです。
中和されて真中の音、っていうんじゃなくて、分離したまま、高い+低い声。
だからある人は手塚さんの声って高いね、というし、別の人は低いっていう。
一度にふたつの音を声で出すっていうの、最近試してるんですけど、なかなか実用まで
至らなくて。(実用って何だかわからないけど…)
口笛ふきながら声出すとか。
ヘンな声なら得意なんすよ。
ロボットの声とか。
いまDVDが出ている『妖怪天国』ってドラマでは、妖怪の声をずいぶんやった。
河童の鳴き声なんか。
『白痴』のときは、エキストラのガヤ音もやりました。
"どこの国とも特定できないアジアの特殊言語"で歓談するっていうの。
これはもう、ほぼ"芸"の領域ですね。
腹話術は、一回しか試してない。
浅野忠信くんと出たテレビがあって、いっこく堂がゲストだったものだから、
浅野くんがウケるだろうと思って、ちょっと真似てみた。
それはともかく。
先のCMでは「ナレーターみたいに言わず、ふだんの喋り方で」って演出だったんだけど、
実はふだん、けっこう早口なんですよ。
ゆっくりしてる印象があるようなのだけど、ホントはかなり早口に、たくさんのことを
ワーッと一度に話す癖、ある。
だから講演とか人前で話す時は、意識してゆっくり喋ろうとしてるんですが。
CMではふだんの喋り方ではやっぱり「早すぎる」ってことになって、アレコレ試しているうち、
結局ふだんの自分とはちょっとズレて、「のんびりした、人の良さそうで明るい」って人を演じることになったわけです。
きっと「演じよう」と決めたほうがずっとフツウで、「普通にしよう」と心掛けると不自然になるんだと想う。
どこまでも天邪鬼なワタシ。
ぜ~んぜんそれるけど、片眼ずつ別々に動かせます?
それできたらカメレオン。
試してるんですけど、なかなか実用に至らなくて…。(だから実用って何だよ?)
片眼だけ寄り眼、ていうのはカンペキ。
危険なのでお子様は真似しないように。

サテ、前回の内容ただのグチですか?ってマネージャーに注意されたんですが、ハイ、
たしかにこぼしてました。(たまには、フツウ人っぽくていいでしょ)
で、映画は作らないんですか?といつも尋ねられますが、近々製作予定。てことしか言えない。
実際はもう作っています。
企画立てて、映画会社とミーティングして、シナリオ作って…。
今、一番面倒臭い、そして楽しい時期なんだな。
面倒については前回グチったので繰り返さないけど、楽しさのほうはね。
内容をアレコレ想像しているときが、映画作家にとって一番ココロ充実して、創作意欲に満ちているとき。
シナリオは、もちろんすぐできるものではない。
一度にバババーッて書いてしまうこともあるけど、たいていはシナリオの前に、
まず登場人物を設定して、"ハコ"を作って、構成を練る。
登場人物を考えるとき、実在する俳優を仮にイメージするときもある。
"ハコ"っていうのは、おおまかな内容だけ決めた、場面の設定のこと。
  ブロック1 物語のイントロダクション
  シーン1.主人公の家。中に入ってゆく主人公たち。
  シーン2.その中の一室。ここで喧嘩になる。
  …
って感じで、物語にそって出来事を簡単にメモして、全体をまとめる。
それを眺めながら構成を考える。
関係者みんなで意見を交わし合ったりもする。
それから、やっとシナリオ。
ここまでが、まあ、一番楽しいところだなあ。
撮影は?って想うかもしれないけど、撮影は、やっぱり面倒だ。
俳優やたくさんのスタッフと仕事できるっていう楽しさは別にあるけどね。
始まるまでは待ち遠しくても、撮影になったら、早く終わらないかな、という感じ。
とにかくスタッフが集まって準備が始まったら、もう自分のペースじゃないから。
「自分の映画」は、シナリオの段階で終了します。
そこから後は「自分の映画」じゃない。敢えていえば「みんなの映画」か。
だから「自分の映画」をやってるときが、至福のときかもしれない。
いや、ウソウソ、映画が無事に完成して観客に見せているときが至福のときだな。
シナリオを準備しているときは、プライベートな愉しみ。
完成したところを想像して、「コレ、かなりいい、面白い」と想っていたり。
現実にその通りに完成するってこと、まず有り得ないんだけど。

作っている間、これはどういう映画なのか、というのをいつも自分に問い詰めている。
どんな映画にするか、ということより。
ヴィジュアリストだから映像から発想するだろうと想っているなら、そうじゃない。
自分にとってだけじゃなくて、観客にとって、周囲にとって、どんな映画なのか。
もちろん、簡単に答えは出ない。
答えはいつも眼の前にあるように見えて、掴みかけると、スルッと逃げてしまう。
コレだ!と想っていても、時間が経つとまた別の答えが見えてくる。
『白痴』なんて、それが見えるまで10年もかかったもの。
テーマを先にコトバで説明しちゃう人もいるかもしれないけど、それはウソ。
というより、取りあえずの説明用テーマなのかも。
そこから始める、って感じで。
ぼくの場合、最初にあるのは、イメージ。
そこからどういう映画なのか、ていう探索が始まる。
ところどころにキーワードや映像も浮かぶかもしれない。
想いもよらないモノにたどり着くこともあるし、「やっぱり」っていう感じで終わることもある。
いま作っている映画は、自分でもまだどこにたどり着くのか見当も付かないから、ワクワクしてます。

ぼくが映画館で観るのが好きなのも、どういう映画かっていうことが気になるから。
どんな映画になっているか、というカタチは家のビデオでも確認できるけど、
自分や周 囲にとってどういう映画なのか、というカンケイはリアル・タイムでの体験が一番。
たとえば本編が終わった後に流れる、クレジットタイトル。
いつも最後までお行儀良く観ているとは限らない。
途中まで観て、なんとなく出てしまう映画が多い。
でも、たまには最後まで観ていたい時がある。
最近だと『チョコレート』がそうだったな。
物語の後のその時間、贅沢に余韻を味わいたい時。
そこまでが映画体験なんですね。
もっというと、映画館を出てしばらく歩いて、そこまで余韻が残る場合もある。
それが必ずしもいい映画ということではないのだけど。
逆に、いい映画でなくとも、気に入るってことは多い。
スヌープ・ドッグ主演の『BONES』って映画知ってます?
レイトショーでやってたんで、内容も知らずにフラッと入って観たのだけど、黒人ばかりのB級ホラーで楽しめましたよ。
スヌープ・ドッグってラップ・ミュージシャン。
なのでホラー映画なのにラップ・ミュージック満載、ていうモンドな映画。
ついサントラも買ってしまった。
見終わると劇場に中原昌也くんがいたので、「面白かったね!」って声を掛けたら、
「え  -? 面白かったですか~?」と怪訝そうに聞き返されてしまった。
チェッ!  

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