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Essay:Dial M

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Vol.7 アメリカの光と闇

Sep 2001
滅多に見ないテレビを久しぶりに数時間も見てしまった。
もちろんテロ当日深夜のニュース。  
やれやれ、ホントに呆れてしまう。  
旅客機は高層ビルに激突させるためにあるのではない。そんなことをするのは馬と鹿の 区別がつかない人である。そういう人のことをバカと呼ぶ。  
本当に実行してしまう連中は相当なバカだが、それに対して宣戦布告する奴はさらにバ カである。  
よく考えてくださいよ。相手はどう考えてもバカなのだ。知的な犯罪なんかじゃない。
バカでなければ思い付かない計画だ。だから世界の皆が大迷惑している。  
そんなバカに力で闘いを挑むことに意味があるのか?  
こういう時こそ、責任ある人の発言は大事ですよ。国民感情を考慮しつつ、憤りを煽っ てどうする? 
それを静めて冷静になるべきでしょう。  
犠牲者の関係者、家族はいたくお腹立ちと思うが、復讐したから当人が帰ってくる訳じゃない。
「眼には眼を」はたしかハンムラビ法典の言葉だと思ったが、
なんでも力まかせに復讐すれば良いというのは時代錯誤も甚だしい。  
キリストは右の頬を打たれたら左の頬を出せと言わなかったか?  
ニンゲン、何千年の昔からやることが変わっていないのは、情けない。  
21世紀らしくアタマやココロを使うことはできないものでしょうか。  
もちろん問題の複雑さディープさは十分わかる。  
「戦争」というシンプルなコトバも様々な意味と側面を持っている。  
「聖戦(ジハード)」と呼ぶ人がいるように、これは宗教戦争の装いを帯びている。  
歴史的、民俗的なモンダイ、経済のモンダイ。
多数の組織が絡み合い、一筋縄では解決できないだろうことは想像できるのだが、だからこそよくよく考えて行動すべきだ  
もつれた糸を元に戻すには、力に任せるよりも、我慢しながら一本一本筋を辿るのが解決の道  
この世にはアタマの良い人もどこかにいるはずでしょう。  
今こそアタマの良い人々は結託し、むやみ感情的に世界をぶち壊そうとするバカな人々を気持ち良く諭すべきだ。  
日本だって天才・秀才・知恵袋を総結集して、問題解決のための委員会を組織し、そこで考えられたことをどんどんアメリカやイスラム世界に提案すべきだ。  
もちろん、戦争には荷担しないという前提で。  
日本は非力な国です。物理的な力は貸すほどにもない。  
金やモノに代えられない東洋の知力が眠っているはず。  
それを捜し発掘し、こういうときだからこそ役立てるべきじゃありませんか  
コトバひとつだって十分に力になるはずですよ。  
「私たちはアジアのバカです」というのか「私たちはアジアの知恵です」というのか、 今こそ選択をしなければ。   
グレートフル・デッドの「ブルース・フォー・アラー」を聴きながら、まずは犠牲者のご冥福をお祈りいたします。
(前回からこんな話題ばかりでスミマセン。)    

ところで事件の2日前までぼくはロスにいましたよ。  
間一髪、というほどじゃないけれど、日本に帰ってこられて良かったと想ってる。  
もっとも、そのころロス空港はのんびりムードで、何も緊張感なかったなあ。  
実は久しぶりのハリウッドに行ってました。  
老舗の映画会社はどこも似ていて、建物は新しく建て直されているけれど、廊下の壁や ら部屋の中には至る所に黄金時代の映画のポスターがずらりと並び、飾り棚の中にはオス カーの像が輝いている。  
そこは「映画」という国のど真ん中だ。
歩いている人は、すべて映画の空気を吸い、映画に誇りを感じて、映画の中に生きている。  
やっぱりハリウッドは、好きだな。  
まだ学生の頃、映画を作り始めた頃、憧れだったハリウッド。  
いつかそこで自分も映画に関われるのだろうか。そんなことを夢みてた。  
かつて初めてハリウッドに脚を踏み入れた時、ああ、ここは故郷だ、と感じちゃった。
理由はわからないけれど、初めて来たという気がしないで、妙に懐かしかったから。  
そのとき「ぼくはハリウッド人種の生まれ変わり」とまで想ったけれど、その後、日本 でチマチマと映画を作るうちに、そんなこと忘れてしまった。  
というより、考え方を変えようと想った。  
なにも映画はハリウッドだけではない。映画館の中だけでもない。  
そして、もうちょっと日本そのものにこだわろう、って。   
なんだか情けないだらしないこの国で、わずか1ミリでも素敵なモダン・アートが生まれるのならば、その可能性にもう少し賭けてみたいから。   
といいつつ、でも日本映画のシステムの中に自分を閉じ込めるより、もっと解放的にやってゆこうと想った。
だから「ヴィジュアリスト」で、映画以外の仕事にも積極的に関わって、娯楽映画以外の映画、映画館でみられない映画、短編や実験映画を積極的に作ってるのです。  
だけれども、その一方で、ハリウッド流のエンターティンメントの灯も心の中に密かに 燻り続けてます。
そろそろまた、そちらの火をおこしてもいいかもしれない。
一見遠回りしているようだけど、きっと自分には無理なく予定通りなんだな。だから安心 してるのだけど。

久しぶりにハリウッドの空気を吸って、ぼくの心はまたそこに戻ってゆく。
驚いたことに、働く女性が増えた。
というより、もうハリウッドの半数は女性じゃないかな?
映画会社の社長やプロデューサーたちも、女性です。
会議に参加する彼女たちは、男性スタッフより活発に意見を言う。好き嫌いもハッキリ してるし。
会社入口に佇む警備員も女性、という映画会社もある。
そんな彼女たちが、セットのような(というかそのままセットなんだけども)会社の敷地内を闊歩する様子は、やっぱり映画ならではの世界。
メジャー映画会社のまだ若い女社長は、いきなり会議室の椅子の上にアグラだもの。まったく、たのもしい感じ。
日本じゃなかなか少ないよね、そんな光景。
(といいながらぼく の周りではけっこう多いか。ネオンテトラも女性ばかりだし。そういえばスピルバーグの 事務所も女性スタッフばかりなんだってね)
彼女たちが今、一番興味を持っている日本映画は『千と千尋の神隠し』。早く観たいワ、 と口々に言っている。

同じアニメでも、最近のハリウッドはCGI流行りだ。
日本より先に封切られた『FINAL FANTASY』は、あまり興業的に成功しなかった。
どう思います? と聞くと、皆、あからさまにイヤな顔をする。
たったひとこと「Stupid!」と。
「どうしてあんな映画を作るわけ?」と女社長は不愉快そうに聞くので、
「彼らは映画人ではなくて、ゲーム屋なんですよ」と答えた。
日本でもかの映画の評判は芳しくない。
実はアメリカでの封切り前に、スクエアの人が直々に事務所に尋ねてきて、15分ほどの予告編を見せてくれたのだけど、そのときは正直、5分でうんざりしてしまった。
「CGI技術のデモテープ」といじわるく言う人がいるけれど、まったくその通りなのだからしょうがない。
たいした技術だけれど、ちっとも驚かない。
というより、やっぱりキモチ悪い。人間の動きとか。
しかし、あまりに評判が悪いものだから、例によっての天邪鬼で、これは劇場できちんと観なくちゃ、と脚を運んだ。
ビデオでは5分でうんざりだったのだから、劇場で2時間を耐えるのはどんな気分か。
これぞ苦行か、と思いきや、意外に最後まで観られましたヨ。
もっともぼくは、映画に対してとても"寛容な"観客なんですよ。
『パール・ハーバー』はもちろん、やはり悪評高かった『ドリブン』だって、楽に観ら れたものね。
『ドリブン』はシナリオが酷い、人物描写が単純すぎるって叩かれていたけれど、ぼく はそう思わなかったな。
この世界にはバカもいるんだから、単純すぎる人間だっていると思う。
シルベスター・スタローンのような人たちが、たまたま集まってしまって、見事に思慮に欠けていたとしても、そういうヤツいるよなって、変に納得してしまった。
こんなところに高い文学性を期待する方がいけないかもね。
Stupidな映画だけど。

話戻って『FF』は、バカとは思わないけれど、シュミレーション・ムービーですね。
映画ってものをシュミレーションして、映画そっくりなモノを作ったという。
食べ物でいえば、人工肉、みたいな。
どこから見ても映画に見えるけど、なんか違うって感じ。
そういう意味では相当ヘンな映画ですよね。
だから、ヘンだなーって呆れて観てました。
変質映画。
でも途中で、ああ、生きている人間の芝居が見たい!って痛切に想っちゃったな。
だからこれは反面教師で、やっぱり生身の人間はイイね、映画には魅力的な役者が欠かせない せないよねってことをよく教えてくれた映画だと想う。
CGIの映画ってフシギで、どんなにリアルに表現していても、後で思い返すと、全部 アニメっぽい記憶になってるんですよ。
『FF』も、あれほどリアルにこだわっているのに、すでに記憶の中ではただの絵になってしまってる。どうしてかしら?
『ダイナソー』ってCGI恐竜の映画があったけど、あれも結局ディズニーっぽいマン ガ映画の記憶しかない。
隕石が降ってくるCGIが、『白痴』の焼夷弾にダブッて見えたけど。

ハリウッドでは、その『ダイナソー』の監督、エリックに会いました。
エリックは歳がぼくと同じくらいで、背丈も同じくらいで、子供の頃はハリーハウゼン のダイナメーションの熱烈なファン。
(というトコロも似てるかも)
そして「アニメーションの世界に身を置き30年…」と言うや否や、居合わせた一同に 「お前、いくつなんだヨ!」ってツッコミ入れられるほどの超若作りのナイス・ガイ。子持ちだけどね。
ティム・バートンの『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』のスタッフだったんだって。
『ダイナソー』は自分ではどう思う? ってイジワルなこと聞いちゃったんだけど、彼 は正直だから、「やった仕事については満足してるよ。けれど、ホントは恐竜に人間の言葉や芝居をさせたくなかったな。全然コトバのないリアルな恐竜だけの映画を作ったら、エキサイティングだったろうね」って。
ぼくはCGIだけの映画って、別に否定しない。
シュミレーション・ムービーなんかじゃなくて、現実を模倣しないCGIならではの世 界は作れると思う
だいたいCGIのイメージって、ハード系かブキミ系なんだけど、もっと美しいものと か、可愛いものとか、新しいイメージにチャレンジしてゆけばいいのに。
涙が出るくらいの美しさ、とか。
だけれども、どちらが好きかって尋ねられれば、やっぱり生身の人間が好きだな。
どんなにリアルな人間を作って見せられたって、橋本麗香の方がずっとスゴイと思って しまう。
肌の美しさは、CGI以上だもの(笑)。

CGIといえば…  ウチの事務所では一緒に働いてくれる若手デザイナーを探しているのです。
webデザインやグラフィックをやっていて、勤め先を探しているって人で、ぼくの仕 事やコトバなんかに少なからず興味ある方、連絡してください。
なんかグラフィックの作品を送ってくれるとなおいいかも。運転できて英語ができると サイコーなんだけど。
そしてもちろん、ウチの事務所は女性優遇デス!

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