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Vol.6 DEAD OR ALIVE
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Aug 2001
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やっと新車が来たと思ったら、またエアコンが故障。
しかも今度は、熱風がガーガー出るに加えて、助手席に水がザアザア流れ出てくる。
ちょうど休みを取って、東北にドライブに行っている最中です。
高速を走っているから、 窓を開けるのもためらわれて、暑いし足元はビシャビシャだし。
ドライブ・インに立ち寄っては、車から水をかい出している。これじゃ車だか船だかわからない。
サービスセンターも夏休みで修理もできない。
そんなに「車に乗るな」ってことなんですか?
岩手の宮古っていうところへ行ったんですよ。
特に理由ないんです。東北のガイドブック開いて、眼に止まったところへ行ってみたと いう。
漁港みたいだし、きっと海の幸は豊富だろうと。
東北自動車道で行ける、というかなりアバウトなプランで走り始めたんですが、考えア マかったですね。
けっこう東京から距離あったんです。7時間のドライブ。そんなに渋滞 がなかったから良かったんですが…。
旅から戻るとお葬式でした。
仕事仲間の澤井健さんが亡くなったんです。
まだ41歳で、突然死。
脳溢血というものなんですか。
本人は少し前に健康診断も受けていて、どこにも異常なかったそうなので、予防のしよ うがなかったみたいですね。
澤井さんはCGのプロダクションをやっていて、何年も前に知り合い、よく仕事をお願 いしていました。
『白痴』のCGプロデューサーで、爆撃機ほか難しいCGIのショットを 作ってくれました。
中断してしまった『ジャングル大帝』のゲームのときには、たくさんのスタッフ共々、文字通り身体を張って取り組んでくれました。
些細なところでは岡野玲子の『陰陽師』CDの初版ジャケットで安倍晴明を立体ホログラフィに作っていたのも彼。
一緒に『鉄腕アトム』をCGで作りましょう、と約束していたものです。
CMでCGのア トムがありましたが、あれも彼の仕事。
あまりに急なことに、知り合いは皆ポカンとしてしまって、どうしていいやらって感じ。
お葬式に出ても、みんなとハナシをするって気分にもなれなくて、夜、ひとり家で弔いの 酒を飲みましたよ。
いい人は早死にする、なんていいますが、ホントまじめで前向きで、ひたむきに仕事を する熱心な方でした。
いつも理性的で、穏やかで、人の話を良く聞き、かつ人に丁寧に話 をする人でした。
多くの若いCGスタッフを育て、技術だけではなく、ものづくりの心を自然に教えられる貴重な人だったと思います。
この場をお借りして、澤井さんのご冥福をお祈りいたします。
ところで彼が亡くなる二日前が、自分の誕生日。
なんと、40歳です。
橋本麗香の歳の倍、ですよ。(ギャー!) と自分で自分を追い詰めてみたり。
まあ、映画監督としては、やっと一人前って年齢ですね。
だいたい40ぐらいで監督デ ビューってのが業界、フツウでしょう。
そう考えればやっと入口に辿り着いたかなって気がしてくる。
何にしても、また新しく生まれた気分。
別に歳、気にする仕事ではないのですが、せっかくのケジメってことで、40歳宣言しました。
ワタクシごとですが、ここに記録しておきます。
宣言1。これからの10年で、10本映画を作る。
『白痴』は10年で1本でしたからね。これからその10年分、取り返しますよ。
これは「1年に1本」ではないところがミソで、もしかしたら10年目に10本とか(笑)。
宣言2。1週間にひとつ、何かモノを作る。
映画はさすがに難しいけども、ビデオなのか写真なのか、絵でもオブジェでも、あるい は小説とか。
とにかく毎週、何かに取り組む。
気軽に言っているようですけど、コレけっこうタイヘンです。
仕事の合間にやるのです からね。
いままでのペースを考えると、1週間を相当計画的に過ごさなければできないかも。
毎月のこのエッセイすら遅れ気味というのに、はたしてそんなことができるのでしょか。
デモ、とりあえず始めてみるのです。
宣言3。父親のハナシで仕事しない。
これはね、さすがに男40にもなったら、もう親のハナシでもないだろう、と。
ただし ぼくのバアイそうも言っていられない。やっぱりみんな手塚治虫のこと、聞きたいしね。
まあ、ぼくもできれば話したいし。
この矛盾するふたつの気分にケジメを付けるため、仕事としては受けるのは止めようと。
どうしたって話さなきゃならないときはあると思うんですね。
これまではね、父親のこと話したり書いたりする仕事は、けっこう無条件にやってきたんですけど、
これからはちょっと控え目にしますのでひとつヨロシク。
あ、勘違いしないでくださいね。手塚治虫の仕事をしないってイミじゃないので。
やりますよ、手塚治虫の仕事。漫画の映画化とか。
自分が監督するしないに関わらず、そういうことはやっていかなきゃね。
手塚プロダクションのモロモロ、そちらはいままで通りやって行きますのでご心配なく。
ところで、"倍"成人式ってことで、今年はスタッフがサプライズ・パーティを開いてく れました。
家に帰るといきなりクラッカーをパン!パン!と鳴らされて、料理の山とシャンパンと、
家族や友人たちの楽しい会話が待っていた。
泣けるじゃありませんか、そういうの。
ぼくは身内のパーティ大好き。
いわゆる業界パーティは疲れるので滅多に行きませんけ れども、ごくウチワの会は、率先して仕切る方です。
だから仕切るのは慣れていても、仕切られるのは慣れない。
しかも自分が主賓なんて…。
ゲストに駆け付けてくれたのはパフォーマンス・アーティストのスメリーさんと弟のボブさん。フォトグラファー、丸尾眞弓さん。20471120の御船さん。テルミニスト
のやの雪さんと、ミュージシャン赤城忠治さん、などなど。
ところでやのさん、赤城さんたちとは、いまテルミンのCD(アルバム)を作っています。
テルミンって、最近、映画もやっているから、分かりますよね?
やのさんたちは、もう何年も前からその楽器に取り組んでいて、いまや日本でも代表的な演奏家です。
赤城さんは『星くず兄弟の伝説』の作曲や、『TEO-もうひとつの地球』 の音楽などで、ぼくの仕事とは切り離せない存在。日本人離れしたポップス感覚はいつも楽しませてもらっています。
今回も例によって、ぼくはプロデュース的な立場。もちろん岡野玲子もコンセプトに参加している。
ムカシ、岡野の漫画『ファンシイダンス』のイメージCDをプロデュースした ときも赤城さんは参加していて、その後、彼のプロジェクト『クレバー・ラビッツ』には
ぼくも岡野も詩を提供しているから、久しぶりの共同作品ってことになるのかな。
かなり前から岡野とまたCDやろうと言ってたんですが、岡野玲子プロデュース(?) の第一弾はもちろん『陰陽師』CDですが、その後に橋本一子さんの『ファンタスマゴリア』を製作して、さていよいよ次はテルミン、って順番なんですね。
みんなで顔付き合わせて家族的な雰囲気でミーティングしながら、古代エジプトだの アトランティスだの、けっこうとんでもないハナシしているから、これはオモシロイと思うよ。
ご存じのようにテルミンって絶滅しかけた電子楽器なんだけど、歴史の中にはホントに 絶滅してしまった楽器なんて山ほどある。
そんな絶滅楽器を復活させている方がいて、ボッシュの絵に出てくるような謎の楽器を演奏してくれるのですが、それらとテルミンの 共演もあったり。
アルバム題名は『eyemoon』です。11月末に発売予定。
こんなことしているのに、はたして「10年に10本」なんてやっていられるのでしょうか?
でもすでに長編短編実験映画あわせて3本も企画を進めていたりして。
うちのスタッフも知らない(!)次回作の題名はずばり『2001』。
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