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Essay:Dial M

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vol.29 ANOTHER FACE

Sep 2003

日本海に立った虹。湯の浜にて。
最近知り合ったある方は、ほぼ同じ歳、生まれた境遇も似ている。
著名な文化人のご子息、早い話「天才の息子」。
ところが彼はぼくと対極的。
父親の存在に背を向け、作家活動には近寄りもせず、必死に勤めることもなく、40になるまで生きてきた。
遺産というか、印税があるから働かなくとも生きていける。
しかも天才の息子だから周りからは敬意を払われ、それなりに人間関係も築ける。
はやい話、遊んでいても暮らせてしまう。

そうかー。
そういう生き方もできたな、ぼくも・・・
と、しばし呆然としてしまった。
ぼくは気が付いたら、自分で必死になんかやっていたからな。
たいしたお金にもならないことだけど。
ダラッと生きる人生なんて、想像もしなかった。
だから今だって、いろいろやってる。
ひと月どころか、1週間だってぼんやりしていた試しがない。
いつもアタマの中にはめいっぱい考え事があって、次から次へ、休みなくやってきた。
この20年以上。

ぼくは内心、彼がちょっぴりうらやましい。
のんびりと生きている彼が。
彼も、ぼくのことをうらやましいと思っているだろう。
もうひとりの自分だ。
かなり以前になるけど、はじめて園子温くんと飲んだ時、ぼくは勝手に彼のことをおっかない奴と思っていたから、 「手塚、この野郎、気取ってんじゃネエヨ!」って絡んでくるんじゃないかとビクビクしていたら、いきなり敬語で話しかけられた。
(スイマセン、園くん)
ぼくが「最近、忙しくてね」というと、園くんは怪訝そうな顔をして「手塚さんが忙しいだなんて言わないでくださいよ。似合いませんよ」と言う。
恐らくぼくのイメージは、印税生活で悠々自適、それでも作家活動だけはこだわりがある人、なのだろう。
生活のためにあくせく働く手塚眞なんて、想像つかないのかもしれない。
もちろん、ただ生活のためだけに働こうとは思わない。
だけど、会社あるからね。ぼく、何人も社員抱えてるし。

実は気持ちの中では、ストイックに、シンプルに生きたいと想っているのですよ。
作品作りを中心にするなら、余計なこと考えずに。
その一方で、関係性を保ちつつ、偶然の出会いを大切に って想いがあるから、来るもの拒まず、どんな仕事でも楽しんでしまうのだけど。
その性格が、結果的には自分の生活を崩さずにいられる理由だと想う。
外見から、淡々とやっているように見えるとしたら。
自分に対して、あまり堅くなになり過ぎないということが。
もしぼくが「もう映画だけしかやらないっ」と決め込んだら、1年もやっていられなくなると想うな、気分的に。

このサイトもそうだけど、自分の中に様々な色があるというのは、ときには楽しく、たまには欝陶しくもなる。
こんな日記、書かなくってもなあ・・・
なんて想ったり。
きっとそんな想いはこんな生き方だから起こることで、些細な悩みまで含めて、実は幸せに生きていられると想いますね。
何かやることがあるということが。
今年はアトム誕生の年ということで、記念でもあるし、そっち方面はちょっとサービスしています。
しかし、いま個人的にもっとも盛り上がっていることは、もちろん新しい映画のプロジェクト。
それは同時に、巨大な悩みの種にもなるのですが。
時に、出演者一般募集(NEWS参照)という告知を出してずいぶんになるけど、応募があまりなかったよん。
映画監督本人に直接売り込める珍しいチャンスだということを、理解していないのかな?
それとも、ヤル気がないのかな・・・?

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