7月4日(土)

局長DAYのチームワーク



TVプロデューサー役で出演していただいた
永瀬正敏さん(右)と林海象監督


6:30 俳優部支度開始
7:00 照明部準備開始
9:00 リハーサル開始 S#100&102 銀河のプライベートルーム

撮影とは、あらゆる規制との戦いである。
予算・機材・天候・撮影時間・俳優のスケジュール・トラブル。次々に降りかかる難題に、 何かをあきらめて、何かを守り通す。その駆け引きの結果、残った部分で演出がなされ、芝 居がなされ、撮影が行われ、フィルムが出来上がる。
これから8日間。全てが足りなかった。
しかし、手塚監督は何一つ削ろうとはしなかった。
正しくは、細かいところの条件・工夫は最大限受け入れるが、大きなシーンの削除はしない。
「大丈夫ですよ。ぎりぎりになったら考えます」とは言っていたが、今までの経緯から「何と してでもやり通す」という硬い意志が見えた。
不可能を可能にするには、誰に何を言われようとも、決して変わらない信念を持ち続ける こと。
それが、映画撮影における監督の苦しみと役割の大部分を占めると思う。そして、監督の信念 がある以上、それに付き従うのが演出部の仕事。
先ず、監督に今後撮影するシーン全てのカット割りを書いてもらう。それを徹底的に分解し、 準備・芝居の内容・俳優のスケジュール・支度時間を計算し、芝居をする位置をまとめる。そ れを、撮影・照明・美術・装飾の各技師と話し合い、カメラの向く方向を決める。1週間分全 て、計画し尽くす。
映画はカメラの向いている方向、つまり写っている所だけ存在していればいい。その最低限の ルールに従い、追っかけながら準備をする。最大限効率優先。それを助監督が巧く捌けるかど うかが勝負だった。
もちろん、監督もそのためにカット割り、芝居をまとめる。撮りきらなければならないのは、 各技師も同様。技術部にも最大のプレッシャーがかかってくる。
この日は『局長DAY』とした。
局長役の岡田眞澄さんの出演カットを中心に、筒井康隆さんや銀河の友人役達を撮影。その他 、このシーンの冒頭『野村と宇津木』の芝居、特別出演の林海象監督・永瀬正敏さんの登場シ ーンをまとめて今日中に撮りきる。
出だしは好調だった。宇津木と野村の芝居は部屋の一角という設定のため、登場人物も少ない。 しかし『野村の手に宇津木が楊枝を突き刺し去っていく』というくだりでつまづいた。
特殊造形チームが作ってきたダミーの腕に、楊枝がなかなか刺さらないのだ。宇津木役の小野 さんは、さかんに恐縮していたが、物理的な堅さの問題。楊枝の裏に針を仕込んでようやくOK。
永瀬正敏さんは、主演の浅野さんとも、この映画のスタッフの一部とも深いつきあい。手塚監 督との交流も深く、永瀬さんの主演作品を多く手がけている林海象監督と、“パーティーにき た若手プロデューサー役”で出演。メイク・衣裳部の凝りに凝った怪しげないでたちで現れる。
そしていよいよ、局長登場。
橋本麗香さんは、日本映画界の大ベテランの一人、岡田眞澄さんを相手に、臆することなく堂 々としたお芝居。岡田さんもこの映画のテーマの一つでもある”芸術の堕落の象徴”を、貫禄 を持って演じてくれました。
ただ、撮影自体は難しかった。先に立てた計画通り、楽屋内での銀河のダンス、伊沢を囲むパ ーティー客の芝居を全て後回しにして、局長周りが移るカットだけを抜き出して撮影。
写っていない側の芝居を想定しつつ、芝居の目線、人物の位置、カメラアングルを計算する。 もし、後日、逆側の撮影の時に、今日撮影する部分がつながらなければ、撮り直さなければな らない。
急ぎつつ、慌てずに。
撮影は22:00近くまで続いた。



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