7月2日(木)

伊沢、銀河の楽屋へ行く

銀河に押し倒される伊沢。そして・・・



9:00 リハーサル開始 S#68 プライベートルームへ続く廊下
      S#69 銀河のプライベートルーム

ようやく今日から、橋本麗香さんの初芝居場に取りかかる。
『伊沢が一人、大スター銀河を、楽屋まで呼びにくる。残虐な噂の銀河だったが、予想もしないことに伊沢を誘惑し始める。耐えきれなくなった伊沢は銀河を跳ね飛ばし逃げ出す』というくだり。
最初に撮影するのは、楽屋入り口で、銀河のマネージャー宇津木に伊沢が脅されるカット。宇津木役には、以前から手塚作品に登場している小野みゆきさん。
このシーンは、当初長岡造形大学の廊下を使って8月に撮影する予定になっていた。それを数日前に楽屋のセットを見た手塚監督が「このドアの外にコンクリの壁を作れば、ロケセットの長岡の大学の廊下の一部として使えますね。」と言ったことから、急遽美術部がセットを手直しして作り上げた。コンクリート打ちっ放しの廊下(長岡造形大学の廊下の壁)に紫の豪華な扉(銀河の楽屋セットの色調)。手塚監督は「ワンカットで撮影しますから、壁を2枚作ってくれればいいです。時間も早いと思います」
このアイデアのメリットは、美術的なマッチングだけでなかった。小野みゆきさんの出演シーンを、東映撮影所だけで終わらせることが出来、長岡での撮影も短縮できる。
さすが、監督である。
当然、監督にもスタッフにも勝算はあった。廊下のくだりは、移動を使いワンカットで手早く撮影する予定で誰もがいたのだから……。
照明効果でキャッチライトというものがある。目玉が大きく写るカットで、黒目が真っ黒だと生気がないように見える。
そのため、ごく弱い明かりを目玉にだけ当てるのだ。目は涙のため反射率が高く、弱い明かりでもキラッと輝き、人物が生き生き見える。このカットも移動車を使って小野さんの顔のヨリを撮るために、キャッチライトが用意された。
が、最初のカットは伊沢と宇津木の全身から始まる。だから、移動して2人にカメラが寄って行く最中に、
照明技師の安河内さんが画面に映らずまた灯が増えたことに気付かせないように、そっとライトを顔の近くに差し出すのだ。難しい技術だが、大ベテランの照明マン安河内氏にとっては、造作もないはずだった。
それがなんと、小野さんの瞳に明かりだけでなく、そのライトの形まで写り込んでしまうのだ。思わぬNGに、明かりの量や近づける距離・角度を調整するが、芝居も、カメラの移動も、ライトを近づけるのも全て別々の人間の手作業である。
照明の安河内さん、撮影の藤沢さん、特機の多さん。それぞれの額に汗が光ってくる。
何度もNGが続き、OKがでたのはすでに、昼近かった。
銀河のメイクに関しては、手塚監督の意向もあり、メイクデザインの柘植さんの手で行われる。1回のメイク替えに2〜3時間かける非常に凝ったもので、全登場シーン衣裳に合わせてメイクも変える。
このシーンは、何と銀河の入浴シーンから始まる。
当然セットのお風呂に湯沸かし器などついていないので、電熱棒と言う特殊兵器(鉄の棒が熱を持って水を温めるだけですが)で、お湯を作る。撮影なので、お湯はぬるい程度にしておく。あまり熱いと、テストや本番前の待機でのぼせてしまうからだ。
しかし、いくらぬるいといっても汗はかくし、お湯が顔につくこともあるかもしれない。3時間かかったメイクを1カット撮影して直していてはたまらないので、撮影自体はお風呂からあがった後のお芝居のくだりから始められた。
『銀河が、怯えている伊沢を言葉でもてあそびながら誘惑していく』くだり。サヨとの一夜と同様、この映画のもう一人の女・銀河と、伊沢が初めて向かい合うシーンである。
銀河の台詞と伊沢のリアクションの表情を、2台のカメラの長廻しで撮影していく。テイクが長い分、その間のセットの緊張も高まる。
さすがに手塚監督自らみっちりとリハーサルしただけあり、麗香さんは、長台詞も芝居も完全に入っている。順調に撮り進む。
銀河は次第に伊沢を追い込み、逃げだそうとする伊沢を押し倒しキスをする。ここで、撮影の藤沢さんから「押し倒すアクションと、倒れた後の2人の体勢から、予定していたカメラアングルからだと銀河の表情が弱い」と意見が出る。
しかし監督はそのまま撮影を進め、後から銀河の表情ではなく、スタッフが予想していなかった伊沢の表情を狙うカットを追加撮影した。
そして、無事芝居場を撮影。
お風呂に入る冒頭シーンを撮影して、この日の撮影は終了。
 



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