伊沢の部屋をよってたかってブチ壊す
東映撮影所内「伊沢の部屋」。スタッフが壁をはずしている。
09:00 | 開始 S#80&S#74 伊沢の部屋 |
19:00 | 終了予定 |
撮影所のスタジオ内に建てられた『伊沢の部屋』のセットは、新潟に立て込んだ『仕立屋の家』の
2階をまるまる再現したものだ。
新潟のオープンセットは町並み全体を作り込んであるので、外の風景が見えたり太陽光を利用した
撮影に使われる。
360度どこを向けても撮影が出来るため便利な反面、太陽の日照時間によって撮影時間が区切られた
り、壁や柱をはずせないため広い絵が撮影しずらい欠点がある。
撮影所のセットは、窓外が見えない夜のシーンを中心に撮影。全ての明かりはライトで作るため、
時間による明かりの変化を気にすることもない。
ということで、セット撮影は、『背景の見えない夜の伊沢の部屋』と、現実には存在しない『メデ
ィアステーション』の2場面である。
また、この映画は監督の絵コンテを再現するところから始まる。監督は浮かんだイメージをコンテ
に描く。
それを撮影するために、作ったセットの壁のあらゆる所をはずしまくった。
おかげでセットバラシ&組立の速度は日に日に速くなるのだが、それに伴いライトの作り込みもか
かるので、毎日が深夜までの撮影となる。
最終日までには床以外全ての装置がばらされた。
本日の撮影は、仕立屋の藤村俊二さんと、その妻役の江波杏子さんが、押入に隠れているサヨに気
づきそうになるというくだり。
まず、藤村さんと浅野さんで、サヨの登場する手前までのお芝居をリハーサル。その動きに会わせ
て、カメラの位置が決まり、クレーンの動きが決められ、照明が始まる。
実は『サヨが伊沢の8mmフィルムを落とし、その音で仕立屋が2階にあがってくる』という部分は、
窓外の家々も映るため、新潟で撮影済み。そのため新潟で作った夕方
の光線が、再現される。その間に俳優2人はメイクと衣裳の支度。藤村さんのカットの撮影が終わ
る頃に、甲田さんがメイク済みで登場。
『仕立屋が階下に戻った後、押入の隠し扉から顔をのぞかせるサヨ』のカットの準備に入る。
夕方には江波杏子さんが現場入り。『押入の中で食事をしている伊沢とサヨ。そこへ仕立屋の妻が
お節介を焼きに来て、危なくサヨが見つかりそうになる』くだり。
今度は一転して朝方のシーンのため、早朝の明かりが作られる。スタジオは当然真っ暗なので、ど
んな撮影をするにも、先ずそのシーンにふさわしい明かりを作り上げなければいけない。
大変時間と根気のいる作業。仕立屋の妻の声に気づき、あわてて押入から飛び出し、部屋に入って
きた妻から押入を隠して慌てて戸を閉める。
その芝居をワンカットで撮影する。久しぶりに芝居らしい芝居で、一同楽しげ。
このシーンは全部で3カットなのだが、それだけに丁寧にライティングされ、5時間近い時間がか
かった。
ここでも1カット2時間のペースは変わらない。特に細かいライティングなので、俳優の代わりに
助監督が舞台に立ち(スタンドインという)その人物に会わせて1時間近くライティングをする。
その後俳優本人が入って、細かく直すので更に30分近く時間がかかる。場合によっては、俳優本
人が入ってから、全てのライティングを最初からやり直すこともあった。
カメラも同様に、テストを繰り返す度に、位置が変わる。当然ライトの位置も変わる。おっかけっ
こである。相変わらずタクシー送りぎりぎりまでの撮影だった気がする。
もう、よく覚えていない。
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(C)Hakuchi Projects 1998