6月14日(日)

私、あなたに嫌われています


09:00 開始 S#72 伊沢の部屋
20:00 終了予定
21:00 ビデオラッシュ

再びS#72の撮影。”サヨの泣く下り”、”2人が初めて抱き合う下り”など、
神経を使う撮影が続く。
昨晩中断した押入の中の芝居から撮影が始まる。
昨日に引き続き、2人の感情の芝居を乱すまいと、緊張した空気が現場に流れる。
それまで、割とすんなりお芝居をしていた甲田さんも、
気持ちを作るための時間を要求する。
薄暗いセットの中、本番体制のまま相手役の浅野さん、
撮影スタッフが息を潜めて静かに待つ。
やがて、甲田さんの「お願いします」という小さな声をきっかけに、
監督が静かに「よーい、スタート」。
カメラ脇に立つ伊沢をじっと見つめながら、じわっと涙があふれてくるサヨ。
「私、あなたに嫌われています」サヨの初めての台詞。
そっと押入の戸を閉め、「私、来なければよかった…」
カメラの前には堅く閉められた襖が映っているだけなのだが、
涙にふるえるサヨの台詞芝居は続く。
監督の静かな「カット」の声に続いて「OK」。
カメラマンの藤澤さんも大きく肯く。
こうして、2日間にわたって、原作の中でもっとも静かで、
もっとも情感の激しい場面が無事撮影された。
その夜は遂に、緊急スケジュール会議を開く。
どうしても現場でかかる時間の許容範囲が、監督と、撮影・照明部と、助監督に、
開きがありすぎて埋まらない。
プロデューサーを交え自分で書いた総合スケジュールが、いかに予定通り進まないかを
赤ペンを入れて説明する。
みんな「判った。大変だ。頑張ろう。」しか言わない。
監督と欠番について話すが、「撮影方法を工夫して乗り切りたい。
基本的に演出には時間がかかってないので、撮影準備を切りつめて、
シーン・カット数はなんとしても撮りたい」とのこと。そりゃそうだ。



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(C)Hakuchi Projects 1998