6月13日(土)

伊沢とサヨの、息詰まるような・・・


ここからドラマが始まります

08:30 セット集合準備開始 S#72 伊沢の部屋
21:00 終了予定

今日と明日の2日間でS#72の全4ページを撮影する。
原作でも中心的なシーンであるこの下り。
”伊沢の部屋に忍び込むサヨ。
伊沢が「白痴の女」に関わっていく重要なシーン。”
浅野忠信さんと甲田益也子さんは、クランクイン前から何度もリハーサルを繰り返している。
甲田さんはこの数分の芝居の中で、戸惑い、恐れ、悲しみ、喜びを、
“無表情な白痴”として表現しなければならない。
常に芝居のテンションを計算しながら、息の詰まる撮影が続く。
浅野さんはそんな「白痴の女」のアクションを、押さえた芝居で受け止める。
これもまた微妙に自分の気持ちをコントロールしながらの演技だ。
スタッフも、2人の芝居の気持ちを考えて、感情が途切れないように、
極力カット順に撮影を進行していく。
とは言っても、監督の狙いである映像のトーンを出すために、
照明も1カット1カット今まで以上に時間がかかる。
「東京のセットに入ればライティング時間は短くなる」
誰もが、考え望んでいたスケジュール達成の希望が、又一つ崩れ去っていった。
撮影は経費節減のため、帰宅時のタクシー送りを出さなくするために、
21:30で終了しなくてはならない。
しかし、芝居はちょうどキリの悪い所でこのタイミングを迎える。
”押入れに閉じこもったサヨ。サヨの気持ちが分からず押入の戸を開ける伊沢。
サヨがしめる、それを伊沢があける。”
その繰り返しを、手塚監督は8カット近く、全てカメラポジションを変えて撮影する。
そして、サヨが泣き始める。
この一連を撮影すると24:00位になる。
しかし撮影ペースを考えると、カメラが部屋から押入の中に向いているカットは、
全て撮影しておかないと不安だ。
よりによってとは思いつつも、この日の終了カットを決めなければならない。
微妙な芝居どころなので、キリどころに悩む。
とうの監督と話をするが「このシーンは何度もリハーサルをしているから大丈夫ですよ。
もうどこでも大丈夫」等と軽く言う。
とりあえず、芝居はおいておいて、撮影効率から、”押入れ中向けブロック”まで
撮影することを、全体に発表する。
と、撮影部チーフの安田さんがボソッと「ここまで撮ると泣きの芝居に気持ちがつながるのに」
とか言い出す。「……」。
この日は22:00近くで終了。
 



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