映画「白痴」ストーリー

過去とも未来とも思える終末戦争下の日本。映画製作を志す伊沢(浅野忠信)は歪んだ長屋が立ち 並ぶ場末の路地裏で、仕立屋夫婦(藤村俊二、江波杏子)の家に間借りをしている。父親の分からない 子供をはらんでいるアキ(あんじ)や娼婦、スリ、満州浪人たちが自堕落な生活を送る路地で、隣に住 む木枯(草刈正雄)とその妻、白痴のサヨ(甲田益也子)の自然な生き方に、伊沢は人間らしさを見い だしていた。
テレビ局『メディアステーション』にアシスタントディレクターとして勤めている伊沢は、堕落した編 成局長(岡田真澄)や編成部長(筒井康隆)、ヒステリックなディレクター落合(原田芳雄)の元、戦 意高揚番組と安直な歌謡番組ばかりの仕事に辟易としていた。現場は、視聴率70%を誇るカリスマ的 アイドル、銀河(橋本麗香)のサディスティックな言動に振り回されていた。銀河の言動を助長するか のようなマネージャー宇津木(小野みゆき)はディレクターをも動かす程の力を持っている。
伊沢はただ一人、銀河のわがままを超然と受け流していたが、かえってそれが銀河を刺激する。伊沢の 唯一の理解者である同僚の吉田(松岡駿介)までもが銀河の誘惑に身を滅ぼし、銀河は伊沢の執拗に追 いつめていく。銀河の画策で身も心も打ちのめされる伊沢。
そんなある日、伊沢が部屋へ帰ると、押入にサヨが忍び込んでいた。その夜から、サヨを押入にかくま い、秘密の生活を送り始める。しかし、空襲はますます激化し、やがて伊沢の住む路地の上空にも爆撃 機の編隊が現れる。
伊沢はサヨの手を取り、燃えさかる炎をくぐり抜ける。その恐怖の極限で二人が見たものは・・・

 

(C)Hakuchi Projects 1998